睡眠負債の健康上のリスクとは?チェック方法と解消方法を徹底解説

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最近何かと話題の睡眠負債について、

  • 睡眠負債の健康上のリスク
  • 睡眠負債のチェック方法
  • 睡眠負債の解消法

を解説します。

日本人の睡眠時間は先進国の中で突出して短い、という調査結果が出ています。

ということは、日本人の多くが睡眠負債を抱えている可能性があるのです。

健康のために、是非とも、睡眠負債についての知識を深め、睡眠負債の解消に努めてください。

睡眠負債とは何か?

まず、「睡眠負債とは何か?」ということについて、ここで解説します。

睡眠負債 (Sleep Debt)という言葉は、スタンフォード大学睡眠研究所のデメント博士によってつくられた言葉で、睡眠不足の状態がどんどんと蓄積して、借金のように膨れ上がる状態をいいます。

睡眠負債を理解する上で大切なポイントは、

  • 睡眠不足とは違う
  • 日中に眠気を感じない人にも睡眠負債はある

の二点です。

睡眠不足とは違う

いつもは十分な睡眠時間がとれているけれど、一時的に仕事が忙しかったり、定期テスト直前だったりして、睡眠時間を削る時を、睡眠不足といいます。

そして、睡眠負債というのは、睡眠不足が慢性的に、そして長期的に続いて蓄積していく状態を言います。

日中に眠気を感じない人にも睡眠負債はある

実は、毎日十分な睡眠時間が取れていると思っていて、日中に眠気を感じていない人にも睡眠負債はあります。

どういうことなのでしょうか?

国立精神・神経医療研究センターの研究グループの実験により、健康な成人でも平均約1時間の自覚していない睡眠不足(潜在的睡眠不足)があることがわかっています。

この自覚していない睡眠不足が長期にわたって続いて蓄積すると、睡眠負債となるのです。

(参考文献)
「『潜在的睡眠不足』の解消が内分泌機能改善に繋がることを明らかに」
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター

睡眠負債が日常生活におよぼす影響と健康上のリスクとは?

それでは、睡眠負債を持っていると、どんな問題があるのでしょうか?

蓄積した睡眠不足は、身体にストレスを与え、健康上の様々な不具合を引き起こすという研究結果が数多くあります。

ここでは、睡眠負債が

  • 日常生活におよぼす影響
  • 健康上のリスク

について、解説します。

注意力・集中力がなくなる

睡眠改善インストラクターで昭和西川専務取締役の西川ユカコさんによると、睡眠負債によって脳の前頭葉の働きが低下するそうです。

前頭葉は、適切な判断をしたり、注意力を維持する働きをします。

ですから、睡眠負債によって前頭葉の働きが低下すると、注意力や集中力が落ちるのでケアレスミスをしやすくなります。

「昨日寝るのが遅かったから・・」程度の寝不足であれば、ミスをしないための対策を立てることもできます。

しかし、自覚がないまま睡眠負債を抱え込んでいるとしたら、大変な事故に繋がりかねないようなミスをする可能性もあります。

(参考文献)
西川ユカコ「睡眠負債」が招きかねない4つの致命的ミス 東洋経済ONLINE 2018年1月5日

病気のリスクが増える

スタンフォード大学医学部の西野精治教授によると、睡眠負債のある人は肥満、高血圧、糖尿病、精神疾患(うつ病など)、がんなどの様々な病気のリスクが高くなるそうです。

また、睡眠負債は免疫力にも影響を与えるので、風邪をひきやすくなります。

さらには、脳にも大きな影響があります。

米国ロチェスター大学メディカルセンターの研究チームが発表した論文によって、睡眠中に脳内の老廃物が脳の外に排出されるというシステムがあることがわかりました。

例えば、アルツハイマー病は、脳にアミロイドというタンパク質が蓄積することで発症すると言われています。

睡眠不足の人は、脳に蓄積したアミロイドが脳の外に排出されにくくなるので、アルツハイマー病の発症リスクも大きくなるのです。

睡眠負債のチェック方法は?

昼間に眠気を感じていない人にも睡眠負債があるのなら、是非とも、睡眠負債があるのかどうかチェックしてみたいですよね。

ここでは、

  • NHKスペシャルで紹介された睡眠負債チェック方法
  • 睡眠研究者がおすすめしている睡眠負債チェック方法

を紹介します。

参考までに、私もこれら二つの睡眠負債チェック方法を試してみました。

私は、スマホに睡眠アプリのSleep Meister(スリープマイスター)を入れて、日々の睡眠をチェックしています。

下の画像は、スリープマイスターによる12月のある1週間の私の睡眠評価です。

私の場合は、睡眠時間が短いのですが、中途覚醒は無く、眠りの深さ・寝つき・睡眠効率はとても良いという評価が出ています。

私の睡眠の質は良くても、睡眠時間が短いので、かなりの睡眠負債を抱えているのではないかと思います。

NHKスペシャルで紹介された方法


(画像 NHKスペシャル「睡眠負債が危ない」番組HPより)

まずは、2017年6月に放送されたNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」の番組HPの中で紹介されている睡眠負債リスクチェックリストです。

過去1ヶ月の睡眠について、以下の8つの質問に答える形式(答えは4択)になっています。

Q1 寝つき(布団に入ってから眠るまでに必要な時間)は?
Q2 夜中、睡眠途中に目が醒めることは?
Q3 希望する起床時間より早く目覚め、それ以上眠れないことは?
Q4 総睡眠時間は?
Q5 全体的な睡眠の質は?
Q6 日中の気分は?
Q7 日中の活動(身体的および精神的)については?
Q8 日中の眠気は?

(引用:NHKスペシャル「睡眠負債が危ない」番組HP

以上の質問に回答した後、性別・年齢・睡眠時間を入力すると、判定が出ます。

私の場合は、「睡眠負債」リスクは「低」と出ました。


(画像 NHKスペシャル「睡眠負債が危ない」番組HPより)

私の睡眠時間は短いにも関わらず、「睡眠負債リスク」が「低」だったのは、驚きでした。

睡眠研究者がおすすめしている方法


スタンフォード大学医学部の西野教授によると、休日に平日の平均睡眠時間より90分〜2時間ほど余計に寝ている場合は、睡眠負債がたまっていると考えて間違いないそうです。

また、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島和夫部長がすすめる方法も休日に行えます。

まず、部屋に遮光カーテンを引くかアイマスクをして、アラーム類はオフにしておく。家族には声をかけないように頼んでおく。この状態で眠って、平日起きる時間に目が覚めてしまったら、そのまま二度寝をする。

この結果、平日の平均睡眠時間より3時間以上長く眠ったら、睡眠負債があると考えた方が良い、とのことです。

私も試してみました。平日の睡眠時間プラス2時間30分のところで、起きなければならなかったので起きてしまいましたが、あと30分ぐらいは余裕で寝られたと思います。

これらの方法でチェックすると、私は睡眠負債がたまっていることになります。

睡眠負債の解消方法は?

それでは、睡眠負債はどうやって解消すればよいのでしょうか?

睡眠研究者は皆、口を揃えて、「夜に寝ることです」と言います。

スマホやPCの使用時間を減らして、睡眠時間を増やすことは、今すぐにでもできる対策です。

でも、仕事や家事、勉強のために、遅寝早起きをしなければならない日本人はたくさんいます。

こういう人たちはどうしたらいいのでしょうか?

寝だめで睡眠負債の解消はできない

スタンフォード大学の西野教授によると、一日あたり40分の睡眠負債を抱える成人が、睡眠負債を解消するのに、1日14時間睡眠時間を与えて3週間かかった、という実験結果があるそうです。

ですから、何年もたまっている睡眠負債を休日の寝だめで解消することはできない、とのことです。

もちろん、休日の寝だめは、睡眠貯金にもなりません。

また、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島和夫部長によると、週末に寝だめをすると、一応、眠気は軽減するそうです。

なので、寝だめをしてとりあえず眠気が取れると、「寝だめをすれば大丈夫」と誤解してしまいます。

しかし、寝だめをしても、睡眠負債によって起こるホルモン分泌や代謝の異常は治らないので、「寝だめしてもう眠くないから大丈夫」では、決してないのだそうです。

そのため、再び、短い睡眠時間の生活に戻ってしまい、健康上のリスクがますます高くなる、という悪循環に陥ってしまう恐れがあるのです。

昼寝で睡眠負債の根本的な解消はできない

最近は、IT関連企業などが社内に仮眠室を設けたり、学校で昼寝の時間を採用しているところがあるというニュースをよく耳にします。

20分程度の仮眠が仕事や勉強のパフォーマンスを上げるという研究報告を、各種メディアで目にすることも多いです。

睡眠改善インストラクターの西川ユカコさんによると、睡眠負債解消のための昼寝は、

  • 平日なら12-15時の間に15-20分
  • 休日なら12-15時の間に2時間まで

なら眠気の解消と疲労回復に効果がある、とのことです。

15時以降の昼寝(仮眠)は夜の睡眠に影響を与えるので、避けなければならないそうです。

ただし、スタンフォード大学の西野教授によると、昼寝(仮眠)は夜の睡眠不足を補うためのもので、睡眠負債を根本的に解決するものではないそうです。

(参考文献)
西川ユカコ 「週末の寝だめ」でどんどん疲れていくワケ 東洋経済ONLINE 2018年12月1日
15分の仮眠が仕事を救う(Bizワザ)日本経済新聞 2018年12月12日

食べ物で睡眠負債を解消できる?

「〇〇を食べるとよく眠れるようになる」
「XXを飲むと寝つきが良くなる」
という広告をたくさん目にしますが、本当に食べ物で睡眠負債を解消できるのでしょうか?

答えは、「良くわからない」そうです。

国立精神・神経医療研究センターの三島先生によると、食と睡眠との関連についての研究手法はとても難しく、根拠となるデータが少ないのだそうです。

例えば、食べるという行動のみでも、食べ物を摂取すると血糖値が上昇し、腸管が押し広げられて、その結果副交感神経が活性化されます。すると、身体から放熱が進んで脳の温度が下がるので、眠りやすくなります。

ですから、食品に含まれるある成分だけが、睡眠に良いというデータを集めるのは難しいのだそうです。

最初の90分間の睡眠を大切にする


(『スタンフォード式最高の睡眠』サンマーク出版より)

寝だめ、昼寝(仮眠)、食べ物では睡眠負債は解消できないことがわかりました。

それでは、十分な睡眠時間を確保できない人はどうしたら良いのでしょうか?

スタンフォード大学の西野教授は、「90分の黄金法則」を提唱しています。

睡眠のサイクルは、深い眠りのノンレム睡眠とその後に続く浅い眠りのレム睡眠で一つのサイクルになっています。

普通は、このサイクルを4 - 5 回繰り返して、朝を迎えます。

そして、西野教授によると、どのサイクルも重要ですが、中でも、最初のサイクルで90分続く(実際は個人差があって90 - 120分)深い眠りのノンレム睡眠が一番大切なのだそうです。

なぜなら、

  • 最初のノンレム睡眠の間に、様々な睡眠のメリットが享受される
  • 最初のノンレム睡眠が整えば、全体の睡眠サイクルも整う

と考えられているからです。

ですから、睡眠時間が短い人でも、最初のノンレム睡眠の質を高めれば、睡眠全体の質が良くなる、とのことです。

しかし、そうは言っても、やはり、理想は毎晩7 - 8 時間眠ることです。

カルフォルニア大学バークレー校のマシュー・ウォーカー教授は、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスをとるには、7 - 8時間続けて寝なければならないと提唱しています。

まとめ

厚生労働省による平成29年国民健康・栄養調査結果によると、睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は平成21年から増え続けています。
厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査結果の概要 p25より)

ということは、睡眠負債を抱える日本人の数も増加し続けていることになります。

睡眠負債のない生活を送るためには、毎晩7 - 8 時間の睡眠が必要ですが、なかなかできないのが現実のようです。

しかし、睡眠負債による健康上のリスクは深刻です。

まずは、

  • スマホやPCを使う時間を減らして、睡眠時間を増やす。
  • 寝始めの深いノンレム睡眠を大切にして、睡眠の質を高めるように工夫する。

ところから始めて、健康的な生活を送ることを目指してみるのはどうでしょうか。

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